今回、初めて会山行に参加させていただきました。新人の中尾と申します。
幸運なことに、入会してから半月もたたない間に、夏合宿に参加させていただくことができました。
合宿地は剣岳。日程は8月13日〜16日(4日間)。剣沢キャンプ場にベースキャンプを張り、期間中3パーティーに分かれ、それぞれのルートをとり16日朝、撤収するという予定でした。
○メンバー(7名):中山(リーダー)、内海(装備)、安田(食料)、小川、木村、川元、中尾
●前夜発
12日夜9時ごろ、浦和発、関越自動車道の夜間割引を使用、約6時間のドライブとなりました。立山黒部アルペンルート扇沢駅パーキングに到着は深夜3時ごろ。扇沢駅構内で約3時間半仮眠。
●13日(初日)
明け方、アルペンルートのトロリーバス始発に乗り込みました。
この日午前は、爽やかで気持ちのよい快晴。昨日までの東京でのまとわりつくような暑さがうそのようでした。
アルペンルート終点の室堂平からは、私にとってのはじめての山岳会登山が始まりました。勉強不足がたたり、歩きにくくて不安になってしまいましたが、大先輩の方々に助けられながら、足取りも安定させることができました。
別山乗越から剣岳の全身像「岩の殿堂」を目の当たりにすることができました。ゴツゴツの岩肌にギザギザの稜線、いままでに登ってきた山とはまさに格が違いました。(今回の合宿中、見晴らしがよかったのは、ここまででした。あとはほとんど霧に包まれっぱなしでした)
剣沢キャンプ場に到着したのは調度お昼頃。さっそくテントの張り方を教わり、食事の作り方を観察。ベテランの先輩方の手際の素晴らしさに教えられることが山ほどありました。このあたりから、天気が崩れ始め雨が降ったりやんだりしてきました。
早めの夕食には、なんと手作りのビーフ(ポーク?)シチューが出ました。環境も手伝って、感動的なおいしさでした。まさに魂の食事。私も食当をやってみたいと思いました。
食後すぐ、5時ごろ就寝。男性陣テントの中に5人。メザシのように並び、先を競うように眠りについていくという様子でした。
●14日
深夜1時半ごろ起床。天気は引き続き、崩れていました。しかし流れの速いちぎれ雲の隙間から、天の川をのぞき見ることができました。この日剣岳の別山尾根ルートを行く二人をのぞいて皆は、お餅を食べて腹ごしらえをしたあと、八峰方面から剣岳を目指して2時半頃出発していきました(しかし、結局このパーティは岩場に到着したところで雨にやられ、残念ながら帰還せざるをえませんでした)。
さて、尾根組の私たちは二度寝をし、5時半頃明るくなってから出発しました。初心者の私は、かなり贅沢なことに、リーダー中山さんの個人指導をえて、初岩山登山を体験させていただくことができました。
天候は曇り、というか山全体が雲につつまれていました。剣山頂を目指し、雲の中へ中へと入っていきました。
お盆のシーズン、悪天にもかかわらず他にも登山客は大勢いました。
登山道には高山植物の花々が見ごろを迎えていました。中山さんから一つ一つ名前をご教授いただきました。普段のように紙とペンにたくすことができません、記憶力を働かせなくてはいけませんでした。登山は感性を研ぎすませる修行とも思い、何度も植物の名前を唱え、憶えましたが、20分もすると、脳のどこかの部屋にしまわれて出てこなくなりました。(いま、おさらいしますと「チングルマ」「キリンソウ」「ヤマユリ」「ハクサンキキョウ」「イワツメクサ」「ハクサンイチゲ」「シナノキンバイ」「ハクサンコザクラ」「トリカブト」など多種多様)
前剣のガラガラの露岩帯(事故が一番多い所)にさしかかるころから雨がジメジメと降り出しました。地面がびっしょり濡れると足も滑りそうで、しかも岩を落石させてしまいそう。転んだら深刻なケガをするので一歩一歩が真剣そのものでした。
鎖場は行列になっていました。大げさでもなんでもなく、死と隣り合わせの緊張を強いられる所でした。そんな所を高校生ぐらいの女子や中年太りの女性が登っていました。そのためか、私は緊張していないフリの顔を作らなければなりませんでした。
鎖は濡て滑りそうで、恐怖感が増します。しかし中山さんの「ヒザをつくな、岩から腰を離せ」「鎖を掴んでいれば落ちないから大丈夫だ」などのお言葉に何度も助けられながら、無難に登りきることができたと思います。
登頂に成功したときは、富士山に登頂した時とは違い、安堵感、達成感からくる歓びがありました。中山さんのおっしゃる通りで、それは仕事をやった時の達成感とは異なるもっと根元的なものでした。「まだ、しばらく生きることはできる」と、きちんと確かめることができて自信が湧いてきました。
帰りは油断をしないように気持ちが早らないように、精神で体を制御しながら降りていきました。下りは登りよりも頭を使わなければならないようです。ベースキャンプに戻ったのは12時ごろでした。八峰組の皆さんは不完全燃焼といったようすで帰還しており、テントの中でとぐろを巻いておられました。
全員帰還後、雨はやがて激しさを増してきました。(ここから半日間、大雨でテントの中に閉じ込められる我慢の時間となりました。)雷鳴が轟き、風雨は衰える様子は一向にありません。気圧は730hPa前後に定着。ラジオでは大型の低気圧が日本海側の街に大雨警報などをもたらしていると言っていました。
テントを水害から守るために、外の治水工事をして、前線が今晩中に去ることを祈りつつ就寝。
●15日
朝3時半頃起床。雨は少し弱まっていましたが降り続いていました。
皆、朝食の「フォー」をいただきながらも、あきらめムード。テントの中には重たいゆっくりとした時間が流れていました。昨日から、もう一生分の「体育座り」をしていた気分でした。
5時ごろの天気予報によると、前線は南にずれつつあるが、大陸の大きな高気圧の影響で風がふき込み、フェーン現象で、今日、明日は一日曇りと強風とのこと。稜線を歩いても吹っ飛ばされるだろうし、岩峰も当然危険、となると。予定をあきらめ、一日早く下山する決断が下されました。
撤収となると行動は速く、強風の中テントを畳み、逃げるように下山の途につきました。
心配されていたアルペンルートも始動しており、順調な下山。下るにつれて天気は回復し、黒部ダムでは虹がみえました。
帰りのドライブも事故渋滞に巻き込まれましたが、大方順調、暑い暑い関東地方に帰還したのは夜8時ごろでした。


