広河原から乗り継いで野呂川出合で下車したのは我々と数人の釣り師だけだった。
深い野呂川の谷を右に歩くこと４５分、小仙丈沢の出合は思ったより穏やかだ。
【野呂川出合バス停付近】
青空の下、沢支度を調えて入渓するとすぐに出会う鉄製の堰堤を左から越えると目の前の光景思わずに息を呑んだ。
【延々と続く倒木帯】
一面の倒木に埋め尽くされた沢。まだ青々とした枝を付けたまま斃れたの木々が沢一面を覆い尽くしている。
これは何だ？何処をどう歩んだら良いのか。
跨ぎ、潜り、まるでジャングルジムの上を歩くように遅々として行程は進まない。
この春の大雪かその後の大雨のせいなのか渓相はあまりに荒れ果てていた。
【やがて沢が開け南アらしい豪快な渓に】
【まだ余裕？】
それでもしばらく進むと渓も開け南アの高山らしい雰囲気になってくる。
青空が眩しい。上々の天気に気分も良く小さな滝を楽しく越えて行くと遠くに第一の大滝が見えてくる。
左岸から巻いて更に幾つか滝を越えると意外に早く第二の大滝が視界に入る。
【稜線は遙か遠くに】
【大滝�，郎鹸澆量昔討米Г澹紊鮹�る】
【大滝�△鰐造辰燭�右のルンゼ状から灌木帯へ】
見えながらなかなか近づかないこの滝は左の壁から越えている記録が多いようだったが傍で見るとけっこう浮き石が多く、３０メートルのザイルでは少し足りなそうなので右のルンゼにルート取る。
上部までの草付混じりを詰めヌルヌルした垂壁を右上して灌木でビレイ。
ザイルを出したのは此処だけだった。
【傾斜が増し水も冷たくなってくる】
この辺りでやっと行程の半分くらいか。まだまだ連瀑が続く。
冷たい飛沫を浴びながら高度差1,000メートル以上のこの沢は、進むにつれ更に傾斜を増し、やがて岳樺が両岸を覆う渓相になり、そろそろ疲れもピークに差し掛かる頃、やっと小仙丈カールに飛び出した。
【誰もいない小仙丈カール】
此処はまるで別天地だ。今ここにいるのは自分達だけ。物音一つしない。
誰もいない広いカールの底を独り占めにして幕営する。「山に抱かれる」とはこういう事なのか。
何も考えずウィスキーに陶然としながら闇に包まれた格別の夜を過ごす。
朝。
日の出前に稜線に立とう。暗闇の中、ヘッドランプの灯りだけではルートが見えない。
何度かハイ松に遮られつつもガラ場を喘ぐと東の空が明けてきた。
もう少しあと少し…
【登る背中を朝焼けが照らす】
【レンズフードがズレて蹴られちゃいまいた】
夜明けを稜線で迎えるのは久しぶりだった。
【バカですねぇ】
メンバー：山下・元会員
【9月14日】
野呂川出合（9:15）−小仙丈沢出合（10:00）−大滝� �11:40）−大滝�◆�12:20）−小仙丈カール（15:30）
【9月15日】
起床（3:30）−稜線（5:30）−仙丈ヶ岳（6:00）−北沢峠（9:00）